ゴー宣DOJO

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切通理作
2010.9.9 23:54

加藤紘一先生と考えたいこと

  さて、いよいよ明後日はゴー宣道場、加藤紘一先生をお迎えします。
  勉強せねば!ということで『劇場政治の誤算』『創造するリベラル』など加藤先生の本を読みました。

  自民党の政権党失脚は、人々にとって、地に足のついた実感がなくなったと思っていたら、突然強者の側からほころびが見えたという事態ではないかと加藤さんは言います。


  それは「マーケット」と「個人」の間にある「社会」を切り捨てた小泉・竹中改革によって準備されていた、と。
  ひとたび市場と認識されれば、違法でない限り正しさも適切さも考えなくていいという価値観が、大切なものを失わせてしまった。
  
  加藤さんがここで、「
社会を切り捨てた」と言っているのが印象的でした。
  所謂「弱者切り捨て」という言葉はよく使われますが、特定の「人」ばかりではなく、その集合体としての共通認識たる「社会」そのものが切り捨てられたのだ、という。

  加藤さんはサッチャーの「この世に社会というものはない。あるのは個人と家庭だけだ」という言葉を引き、日本がそうなってもいいのだろうかと問いかけます。

  そういうことに疑問を持っていこうよ、と問いかけます。
  それはみんなの中にある「
今の世の中はおかしくないか」という素朴な直感と響き合っているのではないかと。
  一生懸命汗水たらして働くことがバカバカしいと思えてしまってもいいのか?と。

  では「社会」がリアルに感じられる場所、というのは、政治家にとってどういう場所なのでしょうか。
  加藤さんは言います。
地域の「リーダー」は、従来そこの「顔」となる人がいて、人知れず共同体の手助けをし、忙しい時は一升瓶を差し入れ、礼を言われても「まあまあいいから」と受け流し、表立って意見は言わないけれど実はみんなの愚痴を聞いている。

  政治家が「地元の意見」を聞く相手は、そんな人徳の持ち主を通してコミットしているのだと。農業の合理化や会社員の多忙化によりそういう人の存在がなかなか難しくなったことは認めながらも、小沢一郎氏が農家を回って支持が集まったことを加藤さんは軽視しません。


  地方が自民党から離れははじめている理由は、そういうリアリティが減ったからであり、加藤さんは膝を突き合わせた話し合いに出来るだけ足を運んでいるといいます。

  所謂「保守系無所属の人々」の姿を、加藤氏はそこに見ているのです。彼らは例えば、不況の中で数年後には自分たちの生産している何が人々から必要とされなくなるのか、その順番まで具体的に気にかけている。ゆえに「厳しく政治の中身を見ている」といいます。

  最近辻元清美さんがあるところで取材に答えて、80年代に自分を支持したような、都市部の「ちょっと豊かな」リベラル層がいる限り自分は今後も大丈夫……と言っているのを読んで、私はゲンナリした気分を味わっていました。
 足元のおぼつかない、そんな「リベラル」に頼っていても、
「イメージ」を相手にしているだけで、いつまでも実質が伴わないのではないかと。

  加藤さんの言う「強いリベラル」というのは、地元社会の中での「共同性」の中で個人のわがままをきちんと験された上で、それでも浮上する、地に足のついた「リベラル」なのだなと。
 
  当日は加藤さんに色んな質問が出るでしょうし、いまどういう質問をするか考えている人もいるでしょう。
  加藤さんも、きっとそれぞれの「現場の声」を知りたいのではないでしょうか。
 
  僕は幾度かゴー宣道場の末席に座らせて頂いて、教員だったり介護者だったりと参加者の方々が口にされる「現場の声」に「保守系無所属の人々」のリアリティを感じてきました。
  
  加藤さんのいう「強いリベラル」を育てていくにはどうしたらいいのか、一緒に考えていく場になればいいですね。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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